株式会社DPD製作所
corporation

1.DPDについて
about DPD

水と塩素消毒(遊離残留塩素)について

水道(給水栓)の水は、塩素消毒の目的で遊離残留塩素を0.1㎎/L以上保持することを義務付けています(「水道法施行規則第十七条」)。
また、公衆浴場の浴槽(循環式浴槽)水は、遊離残留塩素を0.2~0.4mg/Lに保つことが望ましく、高くならない(1.0mg/Lまでが望ましい)こととしています(厚労省「レジオネラ症の知識と浴場の衛生管理」)。
なお、遊泳用プール・学校用プールでは、遊離残留塩素を0.4~1.0㎎/L以下とあります(厚労省「遊泳用プールの衛生基準」文科省「学校環境衛生管理マニュアル」)。
これら水中の遊離残留塩素濃度の測定現場では、DPD法が活用されています。

DPD法について

DPD法(ジエチルパラフェニレンジアミン法)は、N,N-ジエチルパラフェニンレンジアミンが酸化すると、ピンク~赤色に呈色する現象を利用します。
具体的には、測定する水中の遊離残留塩素に、調整したDPD試薬(DPD粉末あるいはDPD溶液)を加え、遊離残留塩素濃度に応じたDPD水溶液の赤みを、色見本と比較して遊離残留塩素濃度を求めます。
色見本には、Acid Red 265標準液を調製した比色管を用いますが、簡便のため、Acid Red 265標準液の色に準じた比色板も用いられています。(「水道法施行規則17条に基づく検査方法」)

DPD法の誤差の原因について

DPD法の呈色原理では、遊離残留塩素によって酸化したキノンジイミンと、未酸化のDPD試薬が反応することで赤く呈色することから、遊離残留塩素に対して、過剰なDPD試薬を必要とします。そのため、水中に遊離残留塩素が多すぎる場合、発色しないあるいは発色不良を起こし、誤差の原因となり得ます(参考文献「残留塩素測定におけるDPD呈色反応機構」)。
また、遊離残留塩素(次亜塩素酸)の消毒はpHによる影響を受けます。水道水や公衆浴場・プールではpH5.8~8.6の範囲内と定められており、この範囲で管理されていれば調整の必要はありませんが、pHが低い場合、遊離残留塩素は塩素ガスとして放出され、pHが高い場合、遊離残留塩素は消毒効果の弱い次亜塩素酸イオン(次亜塩素酸ナトリウム)として存在します(厚労省「次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性」)。pH5.8~8.6の範囲外の場合は、誤差の原因になり得ます。
他にも、水中に含まれる金属イオン(銅、鉄、アルミニウムなど)が誤差を与えることが知られています。水道水の基準値では、銅1.0㎎/L、鉄0.3㎎/L、アルミニウム0.2㎎/L以下です(環境省「水質基準項目と基準値」)。これらの値は基準上限値であり、実際はより低い濃度であると考えられますが、例えば、循環式プールではアルミニウムを含む凝集剤を使用する場合、0.2㎎/Lを超える報告もあります(参考文献「遊泳用プール水における合成有機高分子および無機業凝集剤等の使用実態ならびに残留アルミニウム濃度」)。金属イオン濃度が高い場合も誤差の原因となり得ます。

市販品『調製DPD試薬』は十分な研究がされたか?

市販されている『調製DPD試薬』は、原料の「DPD試薬」の安定性を改善するために、水道法施行規則に基づく遊離残留塩素の検査方法とは異なる各社独自の種々の添加剤を含むと考えられます。この添加剤の影響により、遊離残留塩素と結合塩素の分別ができない、明らかに選択性のない『調整DPD試薬』が報告されています。この場合、特に公衆浴場水・プール水を測定する際には注意が必要です(参考文献「市販DPD試薬を使用して遊離残留塩素を測定する場合の注意」)。

2.『調整DPD試薬』として必要な機能
necessary functions

①告示法と同様の結果が得られること
『調製DPD試薬』を加えた水の呈色が、水道法施行規則(告示法)と同様のAcid red 265標準液の色見本と同じであることが望ましい。
例えば、遊離残留塩素が1.0㎎/Lの水を測定する場合、Acid red 265標準液を20%に調整した色見本と同じ色味であること。
③金属イオンの影響を受けにくいこと
DPD試薬は銅、鉄、アルミニウムなど金属イオンの影響を受けることが知られている。この金属イオンの影響を減らすために、適量の添加物(キレート剤)を必要である。
この時に、水道水の基準値やプール水などの水質(濁度など)改善の目的で添加される凝集剤を考慮に入れて見積もる必要がある。
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②pH5.8~8.6の間で影響を受けないこと
測定する水がpH5.8の時は、遊離残留塩素の大部分が次亜塩素酸として存在するが、pH8.6の時は、大部分が次亜塩素酸ナトリウムとして存在する。
例えば、遊離残留塩素が1.0㎎/Lの水を測定する場合、pH5.8とpH8.6のどちらもAcid red 265標準液を20%に調整した色見本と同じ色味であること。
④結合塩素と選択性があること
市販されている『調整DPD試薬』の中には、DPD試薬と結合塩素が短時間で反応してしまうことで、結合塩素も残留遊離塩素に合算している報告があった。公衆浴場水・プール水などの循環水では、結合塩素が増えることで大きな影響が考えられる。
結合塩素と残留遊離塩素の分別定量を行うために、DPD試薬と結合塩素の反応(呈色)までの時間が長い方が望ましい。
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商品説明
description

告示法(Acid red 265標準液)との比較

Acid red 265標準液と水道水にDPD溶液を添加したものの比較
水道水(残留遊離塩素濃度0.4㎎/L程度)にDPD溶液を添加したものは、告示法(Acid red 265標準液)と同様の色味が得られることが確認できました。
告示法(水道法施行第17条に基づく検査法)に準じて、Acid red 265標準液を純水で薄めて、残留塩素濃度の比色列を作製しました。事業所(東京都北区)の水道水をDPD溶液で呈色させ、告示法の比色列と色味に違いがないことを確認しました。

pHによるDPD溶液の呈色の比較

Acid red 265標準液(0.4㎎/Lおよび1.0㎎/L)と水道水に次亜塩素酸ナトリウムで残留遊離塩素濃度を0.4㎎/Lおよび1.0㎎/Lに調整した検水を硫酸あるいは水酸化ナトリウムでpH5.8(±0.2)およびpH8.6(±0.2)に調整したものに、DPD溶液を添加したものを比較
pH5.8とpH8.6でも告示法(Acid red 265標準液)と呈色に差がないことが確認できました。(比色管が円柱形なので、写真だと光の加減で色味に若干バラつきを感じますが、肉眼では同じです)
酸化力(殺菌力)の強い次亜塩素酸の割合はpHによって大きく影響を受けます。pH5.8ではほとんど全てが次亜塩素酸として存在しますが、pH8.6では次亜塩素酸は1割を下回ります。pH8.6で減った次亜塩素酸は次亜塩素酸イオン(文脈によっては次亜塩素酸ナトリウムと同じ)として存在します。
この試験では、pH5.8とpH8.6に呈色に違いなく残留遊離塩素濃度を測定できました。これは化学平衡という自然の働きによるものと考察します。次亜塩素酸が消費されれば、次亜塩素酸イオンが次亜塩素酸に変わることで常に割合が一定になる働きです。そのため浴場水やプール水の水質管理ではpH5.8~pH8.6の範囲内であれば消毒効果は期待できると考えます。

金属イオンによるDPD溶液の呈色

水道水の上限値および循環式プール水(アルミニウムを含むの水質改善試薬を添加)の場合を想定して、純水に金属イオンを添加。(残留遊離塩素なし)
調整した水にDPD溶液を添加して、呈色を確認。
水道水を原水とした場合、金属イオンの影響は無視できることを確認しました。なお、温泉など水道水よりも著しく金属イオンが高濃度の場合は、弊社DPD溶液の利用を控えるか別途EDTAあるいはCyDTAを添加して下さい。
水道水上限値かつ循環式プール水を想定したモデルでは、ほぼ呈色なし(肉眼だと0.05㎎/L標準液よりも薄く極わずかに呈色)。このモデルの2倍の金属イオン量の場合、若干の呈色。0.05~1.0㎎/Lの間の色味。

結合塩素で呈色しないことを確認

DPD溶液添加直後

水道水(残留遊離塩素約0.4㎎/L)にアンモニウムイオン(原料:硫酸アンモニウム)を添加したものと、添加していないものに、それぞれDPD溶液を加えて、残留遊離塩素濃度を分析。
アンモニウムイオンを加えたものはほぼ呈色せず(肉眼だと0.05㎎/Lよりも薄いが極わずかに呈色)。結合塩素で呈色しないことを確認。
アンモニウムイオンを加えていないものは残留遊離塩素として、0.4㎎/L程度に呈色。

DPD溶液添加3分後

左画像のサンプルを3分間放置、呈色に差なし。3分程度の短時間では結合塩素による誤差がないことを確認。ただし、長時間の放置では徐々に呈色が起こるので、DPD溶液添加後は速やかに呈色をご確認下さい。

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